第四回 女性アスリートの三主徴

女性アスリートが陥りやすい健康問題について、紹介させていただきます。「利用可能エネルギー不足」、「無月経」、「骨粗しょう症」の3つの疾患を女性アスリートの三主徴といいます。この三主徴の始まりは、「利用可能エネルギー不足」と考えられており、運動によるエネルギー消費量に見合った食事からのエネルギー摂取量が確保されていないことで起こります。エネルギー不足によって、ホルモンバランスがくずれ、さまざまな症状が発生します。
正しい知識を身につけ、健康的によりよいランニングライフを送ることができるようにしましょう。

月経について

激しいトレーニングや精神的ストレス・摂食障害などからも月経異常が発生する可能性があります。
月経周期は、ホルモンによってコントロールされているため、何らかの原因でホルモンバランスが崩れることで、月経異常が発生します。体脂肪は、女性ホルモンの生成に必要であり、体脂肪が少なすぎると排卵障害や月経異常の原因になると言われています。陸上長距離選手など、やせていることが良いことだと思いこまれている選手たちは、月経が起こらないことが当たり前だと思いこまれがちですが、これが原因で疲労骨折を繰り返してしまう例も多くあります。
無月経の状態が続くと、子宮の萎縮を招いたり、将来的に不妊症に陥ってしまうこともあります。
将来の妊娠などの可能性や疲労骨折などを防ぐためにも治療をすることが大切です。

アスリートの月経異常対策

無月経は慢性的に利用可能エネルギーが不足することで発生します。エネルギー不足の状態が続くと、希発月経などの月経不順の状態を経て無月経に至ります。

予防・改善するためには、運動によるエネルギー消費量に見合った食事からのエネルギー摂取を確保しなければなりません。
アメリカスポーツ医学会では、利用可能エネルギー不足の第一段階のスクリーニングとして、「成人ではBMI17.5kg/m2以下、思春期では標準体重の85%以下」を指標としています。

また、毎日基礎体温を測定しモニタリングをすることで、月経に伴う周期的な変化が正常に起きているかを確認することができます。

しかしながら、月経に関する異常・障害について個人で判断することは危険であるため、婦人科医や公認スポーツ栄養士との連携のもと適切に対応することが大切です。

女性に多い鉄欠乏症貧血について

鉄欠乏性貧血は、赤血球やヘモグロビンの材料である鉄が不足して起こる貧血のことです。
女性に多い要因として、ダイエットや偏食による鉄摂取の不足や、月経、子宮筋腫による鉄排出の増大などが挙げられます。
①主な症状
頭痛、めまい、耳鳴り、易疲労感、倦怠感、食欲不振、便秘、下痢、無月経、浮腫 など
②鉄欠乏性貧血の予防
日頃から偏食を避け、鉄分やたんぱく質を十分に含むバランスの取れた食事が重要です。 植物性の食品に含まれる鉄分は、動物性のものよりも吸収されにくいですが、ビタミンCや肉類と一緒に摂取すると吸収がよくなります。
③鉄分を多く含む食品
動物性:レバー、もも肉(赤身)、かつお、マグロ(赤身)、あさり、しじみ など 植物性:ひじき、ほうれん草、小松菜、切り干し大根、納豆、豆腐、ごま など サプリメントなどで過剰に鉄分をとりすぎると、肝硬変や心筋症、糖尿病などの危険があるため、自己判断での摂取は注意が必要です。

バランスのよい食事とは

エネルギー不足によって生じる問題は様々ありますが、予防のためにはサプリメントなど特定の栄養素をとって補うのではなく、いろいろなものをバランスよく食べることが大切です。
何をどれくらい食べたらよいかを考える際の参考として、農林水産省が発表している「食事バランスガイド」などがあります。
これらを参考に、バランスの良い食事を必要に応じて食べることが、健康にスポーツをする上で大切です。



農林水産省,食事バランスガイド http://www.maff.go.jp/j/balance_guide/index.html(参照2019,2,8)


監修/井戸田 仁 医師
医学博士、日本整形外科学会専門医、日本体育協会スポーツドクター、日本整形外科学会 スポーツ医、日本リハビリテーション学会認定臨床医、などの資格を有し、びわじま整形外科院長、  井戸田整形外科名駅スポーツクリニック副院長。
愛知県体育協会理事、スポーツ科学研究委員会委員、愛知県スポーツドクター連絡協議会会長などとともにプロスポーツチーム、実業団チームなど多数のチームドクター兼務中。
Gold Sponsor
Silver Sponsor
Bronze Sponsor
Official Car
Official Timer
Official Bread
Official drink
Official Sponsor
Official Supplier
Official Photo Service
Official Supporter
Organizer