MEDICAL

第六回 マラソンで起きやすいケガ

今回はマラソンで起きやすいケガについて紹介します。ケガの原因や具体例、対処と予防に関する情報を知って頂き、より良いコンディションで大会当日を迎えましょう。
また、日頃のコンディショニングについても役立つ知識が満載です。
現在ケガを抱えていないランナーの方々も目を通してみてください。

ケガの発症原因について

ランニングの着地時には体重の3~8倍の衝撃が加わるとされており、長時間のマラソンではその衝撃が積み重なりケガや痛みへとつながります。42.195㎞という長距離を痛みなく走りぬくためには、正しいアライメントの獲得や着地時の衝撃を受け止める十分な筋力が必要です。

着地時に起こりやすい下肢のアライメント不良は、①knee-in & toe-out、 ②neutral、③knee-out & toe-inの3つに分けられます。
①膝が内を向きつま先が外に向くknee-in & toe-out、②膝の向きとつま先の向きが一致しているneutral、③膝が外に向きつま先が内に向くknee-out & toe-inになります。
着地時にneutralポジションを維持することが出来ない場合、膝や足への組織には伸張ストレスや圧縮ストレスといった負荷がケガの発症に大きく関係してきます。

マラソンで起きやすいケガの紹介

先ほど紹介したアライメント不良でランニングを継続すると、靭帯や筋肉が骨に付着する部分では、ストレスが集中しやすく炎症や痛みを引き起こしやすいです。下図で示すような部位に、ランニング中やランニング後に痛みがある方やその部位を押して痛みがある方は、靭帯や筋肉に損傷をきたしている可能性があります。運動量の調節や早めの整形外科への受診をおすすめします。

①腸脛靭帯炎
②膝蓋靭帯炎
③鵞足炎
④シンスプリント
⑤アキレス腱炎
⑥足底腱膜炎

実際に痛みがある場合の対処法

今回は皮膚に傷のないケガの対処方法を紹介します。

先に紹介したケガの多くは、筋肉や靭帯などの組織に損傷が起き、その反応として炎症が起こります。この炎症反応には正常な組織の再生促進等の大切な役割があります。また炎症は目視や手で触ることで確認ができ、①発赤②熱感③腫脹④疼痛⑤機能障害の5つの徴候があります。ランナーの皆さんがケガをした場合に現場でできる対処方法として、この炎症反応を抑制するRICE処置というものを紹介します。

RICE処置とは、Rest、Ice、Compression、Elevationの4つの頭文字を用いた代表的な対処方法です。Restは安静、Iceは冷却、Compressionは圧迫、Elevationは挙上を意味し、患部への血流を緩やかにしたり、内出血を抑える効果があります。それぞれに効果がありますが、すべて行うことができない場合もあります。その場の条件に合わせ1つでも多くの対処ができるようにすることが大切です。

RICE処置を行う際には氷、ビニール袋または氷のう、バンテージや冷却用のラップを準備します。ビニール袋の中に氷を適量入れ
平らにし、袋の中の空気を口から吸い、袋の口を結びアイスパックを作ります。この際、袋の中を出来るだけ真空状態にすることで冷却効率が高くなります。作成したアイスパックをできるだけ患部に密着させ、適度に圧迫を加えながらバンテージ等で固定します。

最後に注意点です。まず何を使って冷却するかですが、溶けかけの氷が適しています。表面に霜が張っている氷は非常に温度が低くなっているため凍傷を引き起こす危険が高くなります。このような氷は少し溶かしてから使用すると良いでしょう。ゲル状のコールドパックも有効ですが、冷凍庫でカチカチに固まったものを使用すると凍傷の危険があります。冷蔵庫で保存されたものを使用すると良いでしょう。冷却時間は損傷した部位により異なり、1回につき20~45分を目安に行います。指と太ももを比較した場合、太ももを深部まで冷却しようとすると指よりも時間をかけなくてはなりません。間隔は1~2時間に1回、24~72時間が適応となります。湿布薬には痛みを緩和したり、炎症を抑える成分が含まれていますが、冷却効果は期待できません。そのためケガをした直後はアイスパック等で冷却を行い、就寝時や移動時に湿布を用いると良いでしょう。

痛みがある場合は整形外科を受診し、正しい診断と対処方法を指導していただくことをおすすめします。

実際に痛みがある場合の対処法

ケガをする要因は様々なものがありますが、それが自分自身の筋力不足や姿勢、ランニングフォーム不良等の内的要因なのか、練習量や負荷、シューズ等による外的要因であるかにより予防方法は異なります。それぞれの問題点に対して正しい対処をすることがケガの予防には大切です。

ここでは偏平足を例に予防方法を紹介します。偏平足はランニングフォーム不良の原因になりやすく、疲労骨折や足首の捻挫、膝痛、腰痛等多くのケガを引き起こす可能性があります。これらのケガを予防するために自分でできることは足の筋力強化や可動域を大きくすることです(図1、2、3)。


【図1】足関節背屈運動
足首にチューブをかけて、つま先をまっすぐ上にあげ、ゆっくり元に戻す。


【図2】タオルギャザー
つま先をまっすぐにしタオルを指で掴んで離すことを繰り返す。 指先だけでなく指の根本からタオルを掴むことを心がける。


【図3】ふくらはぎのストレッチ

ストレッチしたい足をまっすぐ置いて、かかとが地面から離れないように前傾する。

次の段階として、カーフレイズやスクワット(第1回のブログ参照)等の荷重をかけるエクササイズで下半身の筋力強化や正しい動作イメージを反復することです。これらはknee-in & toe-out等のアライメント不良を改善させることにもつながります。実際に走り始める際には、ランニングシューズのインソールを偏平足用のインソールに変更することも大切な予防のひとつになります。
市販のインソールが自分の足に合わない場合は整形外科に受診し、適切なインソールを医師から処方していただくと良いでしょう。


監修/井戸田 仁 医師
医学博士、日本整形外科学会専門医、日本体育協会スポーツドクター、日本整形外科学会 スポーツ医、日本リハビリテーション学会認定臨床医、などの資格を有し、びわじま整形外科院長、  井戸田整形外科名駅スポーツクリニック副院長。
愛知県体育協会理事、スポーツ科学研究委員会委員、愛知県スポーツドクター連絡協議会会長などとともにプロスポーツチーム、実業団チームなど多数のチームドクター兼務中。
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